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114
上場企業の子会社(非上場)における有償ストック・オプションの活用について(2020年9月30日号)
Topic. ► 上場企業の子会社(非上場)における有償ストック・オプションの活用について
はじめに
現在、日本国内においては複数の非上場子会社を抱える事業持株会社、純粋持株会社が多く存在しており、2020年8月現在、日本の証券取引所において少なくとも約900社あります。
持株会社としては、経営権限の委譲により各子会社の責任と成果の明確化をすることで、経営陣の業績に対するコミットメントを高めたい意図があり、多くの持株会社では、各子会社の経営幹部に対して、ストック・オプションや譲渡制限付き株式などの株式報酬制度を活用し、持株会社の株価と連動したインセンティブ制度を導入しています。
一方で、持株会社の株式を対象としたインセンティブ制度は、持株会社の株価に報酬額が左右されるため、設計の難しさも指摘されてきました。
例えば、グループ全体から見て規模の小さな子会社の場合は、その子会社の業績が持株会社の株価に与える影響は限定的です。このような子会社の経営陣に対して、持株会社の株式を対象としたストック・オプションを付与しても、当該ストック・オプションが子会社の業績成長のインセンティブにつながるか慎重に検討する必要があります。そのため、それぞれの子会社の状況や期待に合わせたインセンティブ制度の設計が必要でした。
上記のような背景から、最近では、子会社の経営幹部に対して、各子会社の非上場株式を対象とした有償ストック・オプションを付与する事例が増えています。子会社の非上場株式を対象とした有償ストック・オプションでは、その子会社の株価上昇分が報酬額に反映されるため、子会社の業績向上への貢献度と報酬を適切にコントロールすることが期待できます。
有償ストック・オプションの概要は過去に取り上げた内容のため、以下をご参照ください。
非上場株式を対象とした有償ストック・オプションの活用例
子会社の非上場株式を対象とした有償ストック・オプションをインセンティブ制度として活用するためには、対象者が企業価値向上の貢献度に応じて報酬を得る機会が必要です。
報酬を得る機会は、主に以下の3つのシナリオが想定されます。以下の機会が生じた時点の株価と有償ストック・オプション発行時の株価との差が対象者の株価上昇への貢献と認められ、対象者が得られる報酬となります。
1.IPO後に権利行使をした上で、市場での株式売却
<子会社上場を目指さない場合>
2.対象子会社の株式譲渡をきっかけとした、買収会社による有償ストック・オプション
もしくは権利行使後の非上場株式の買い取り
3.一定期間後に、持株会社による有償ストック・オプションもしくは権利行使後の非上場株式の買い取り
対象者に達成すべき目標を明確化するために有償ストック・オプションの行使条件として業績条件を付加することが多くあります。例えば、持株会社が承認した事業計画の営業利益目標を、5年以内に達成した場合のみ行使可能となるような行使条件などです。
非上場株式を対象としたストック・オプションを設計する場合、ストック・オプションの目的となる非上場株式の価値を把握する必要があります。その際の価値評価にあたっては、発行会社の事業環境等の各種要素を考慮して、適切な評価手法を選定することが重要です。
おわりに
非上場子会社におけるストック・オプション発行は、上場持株会社の会計、税務、株主への影響を考慮して実施する必要があります。また、そのストック・オプションの理論的価値については対外的な説明責任が果たせるよう、新株予約権の評価実務に精通した専門家に事前に相談することが必要となります。
プルータス・コンサルティングは、持株会社の各子会社の企業価値向上、ひいては持株会社の企業価値向上を促進するため、適切なインセンティブプランを実行するサポートをしています。
執筆者紹介
林 将大 < コンサルティング部 コンサルタント >
大学卒業後、野村證券、香港の金融機関にて幅広い金融業務に従事した後、Fintechスタートアップへの経営参画を経て現職。スタートアップから上場企業まで幅広いフェイズの資本政策を支援。 慶應義塾大学経済学部卒、北京語言大学中国語課程修了
株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当
〒100-6035 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング35階
TEL:03-3591-8123
※ 本メールは、プルータス・コンサルティング社員が名刺交換および面談させて頂いた皆様にお送りしております。配信停止のご希望は こちら から承ります。
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