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税制適格ストック・オプションの要件緩和(令和6年度税制改正)に関する2024年12月末を期限とする経過措置まとめ(2024年6月28日号)

Topic.►税制適格ストック・オプションの要件緩和に関する2024年12月末を期限とする経過措置まとめ


 

令和6年度税制改正の適用範囲と経過措置
2024年3月のPLUTUS NEWS、「令和6年度税制改正及びセーブハーバールールを適用した場合の税制適格ストック・オプションの発行時の検討ポイントの整理(2024年3月29日号)」にて記載させて頂いた通り、令和6年度税制改正に伴い、税制適格要件が一部緩和されています。
当該緩和に関しては、令和6年4月1日以降の契約に対して有効となり、過去に発行(令和6年3月31日以前に契約)されたストック・オプションについては、従前の税制適格要件が適用となります。
ただし、年間行使金額と株式保管委託要件の緩和の適用範囲については経過措置が設けられており、過去に発行(令和6年3月31日以前に契約)された税制適格ストック・オプションについても、令和6年(2024年)12月末までに契約変更を行うことで年間行使金額と株式保管委託要件の緩和が適用することが可能とされています。
 
>参考:経済産業省による解説
なお、経過措置を適用する場合は、割当契約等の契約変更が中心となりますが、実際に手続きを実施する場合には、各専門家(法務及び登記の観点からは弁護士・司法書士、税務上の観点からは税理士、ストック・オプションに係る会計処理に関しては会計士・監査法人)に必ず確認・相談をいただいたうえで、手続きをおすすめください。また、各論点の整理に関してはお気軽に弊社までお問合せください。

 

 
年間行使価格の変更が想定されるケース
令和6年度税制改正前の税制適格要件においては、年間行使金額が1,200万円以下と限定されていたため、税制適格ストック・オプションにおいては、権利行使価格×付与株数の合計額が一人当たり1,200万円以内となる範囲内で発行しているケースが一般的です。
 
一方で、資金調達を重ねて株価が高くなった後の発行など、一部のスタートアップにおいては1,200万円を超える水準での発行も見受けられます。
その場合、割当契約において年間の行使金額の上限を1,200万円と定めることで、複数年度に分けて権利行使をさせて税制適格要件を満たす前提としています。
上記の場合は、令和6年度税制改正の経過措置を適用すれば、改正後の税制適格要件の範囲内(注1)で年間の行使金額の上限を引き上げることが可能です。
 
(注1)

 
 

保管委託要件の変更が想定されるケース
令和6年度税制改正前の税制適格要件においては、権利行使によって対象者が取得する株式を証券会社等に保管委託することが必要であったため、証券会社等が保管委託を受託する前提、つまり上場後の権利行使が基本とされていました。(注2)
この要件に合わせ、割当契約においては、権利行使は上場後においてのみ認められ、権利行使後に取得した株式を証券会社等に保管委託することが規定されることが一般的でした。
 
この場合、M&AによるEXIT時においてはストック・オプションの権利行使が認めらず、例外的に契約変更で権利行使を認める場合や、譲渡承認を認めてストック・オプション自体を譲渡する場合には、税制非適格として総合課税の対象となります。(注2)
また最近は、より時価総額を高めてからの上場を企図して、あえて上場タイミングを遅らせるスタートアップも存在し、このようなケースでは、上場前に権利行使期間が満了してしまうことでストック・オプションの権利行使ができなくなる事例も見受けられます。
 
上記の場合は、令和6年度税制改正の経過措置を適用し、権利行使方法の規定において、上場前の権利行使時には発行会社において適切に株式を管理する前提とすること等の文言を追加し、上場前の権利行使を可能にするにおいても税制適格要件を満たすようにすることが可能です。
 

(注2)
一部の証券会社においては、未上場のステータスで定款変更をおこなって株券発行会社とすることで保管委託を受託する事例もあり、この場合は上場していない状態でも従前の税制適格要件を満たすことが可能でした。

 
 

行使価格の修正
国税庁QAを参照すると、「税制適格ストック・オプションの要件を満たしている契約について、通達改正後に権利行使価額を引き下げる契約変更を行った場合で、かつ、当該契約変更後の権利行使価額が同通達に定めた権利行使価額に関する要件を満たしているときは、税制適格ストック・オプションとして認められることとなります。」と記載があります。ただし、行使価額の修正には株主総会決議が必要です。
 
 

おわりに
令和6年度税制改正における税制適格ストック・オプションの要件緩和によって、税制適格ストック・オプションの使い勝手が改善し、従前よりさらに多くの企業から新規発行に関するお問合せを頂いております。
同時に、過去に発行したストック・オプションの取り扱いに関してもご相談が増えており、その中でも本稿でまとめた経過措置については最も多く問い合わせを受けております。
また、既存のストック・オプションの内容変更を行うか、既存のストック・オプションは消却した上で新規でストック・オプションを発行するか等、資本政策に関わる点もご相談が多くなっております。
弊社では豊富な支援実績を通じた専門性を生かし、変更の手続きに必要なプロセスの整理や、会計、税務、法務を踏まえた発行会社の資本政策のアドバイスが可能です。
ぜひお気軽にご相談ください。

 

 

執筆者紹介


林 将大 < フィナンシャル・アドバイザリー部 マネジャー >
大学卒業後、野村證券、香港の金融機関にて幅広い金融業務に従事した後、Fintechスタートアップへの経営参画を経て現職。スタートアップから上場企業まで幅広いフェイズの資本政策を支援。
慶應義塾大学経済学部卒、北京語言大学中国語課程修了


株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当

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