レポート/メールマガジン

REPORTS

プロがまとめた調査・考察レポートを無料公開中

レポート/メールマガジン

インセンティブ・プラン

No.
161

ストックオプション・プール制度の概要及び実務上の検討事項について

Topic. ► ストックオプション・プール制度の概要及び実務上の検討事項について


 

はじめに

2024年6月28日配信のPLUTUS NEWSにて税制適格ストックオプションの要件緩和に関して取り上げましたが、今回も同様の注目テーマとしてストックオプション・プール制度の概要・適用要件、検討すべき論点を取り上げたいと思います。
2024年9月を法案施行日として「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律」により、あらかじめ一定規模のストックオプションの発行枠を設定し、役員や従業員に対して柔軟にストックオプションを付与する仕組み(以下、ストックオプション・プール制度と呼びます)が利用できるようになります。
 

ストックオプション・プール制度の概要

発行会社が株主総会決議(募集事項決定決議)後に取締役会に決定事項を委任する際に所定の適用要件(後述)を充たし、経済産業大臣・法務大臣の確認を経ている場合については以下の対応が可能となる見込みです。

● 権利行使価額
● 権利行使期間 を取締役会に委任して決議可能となります。
● 取締役会に委任できる期間(株主総会から1年間)の制限が撤廃されます。

 
これまで新株予約権の募集事項決定を取締役会に委任する場合は権利行使価額や権利行使期間は取締役会に委任することができず、取締役会に委任可能な期間が株主総会から1年以内という制限がありました。
そのため、株主総会から1年を超える時期にストックオプションを発行する場合は都度、株主総会決議にて取締役会への委任決議が必要となっておりました。
ストックオプションの発行を検討するスタートアップにとっては株主総会を都度開催したうえで取締役会への委任決議をしなければならず、機動的なストックオプションの発行を阻害しているという意見が経団連から国に対して寄せられたこともあり、法改正により特例的にスタートアップがストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できるストックオプション・プール制度が設けられました。
 

会社法239条とストックオプション・プール制度の比較


 

適用要件 その1

  • 1. 発行会社が設立から15年未満であること
  • 2. 新株予約権の発行が株主の利益を確保しつつ、産業競争力を強化することに資すること
  • 3. 上記1及び2の条件を充たし、経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けていること

 

適用要件 その2

(a) 発行会社が以下の1~3のいずれかに該当すること

  1. 株主間契約で上場又はM&Aに関する合意が存在する(一般的な株主間契約で定める株式公開に向けた努力義務、Exitに向けた協力義務を想定)
  2. 投資事業有限責任組合契約による投資ファンド等が株式又は新株予約権を保有
  3. 発行会社において残余財産分配権や取得条項が設定された種類株式が存在している

(b) 以下の1又は2のいずれかの属性の付与対象者に対して新株予約権を発行すること

  1. 付与対象者が発行会社又は発行会社の子会社の役職員であること
  2. 付与対象者が発行会社に対して役務を提供する者であること
  3. ※業務委託社員等を想定

(c) ストックオプション・プール制度を導入した旨を以下の者に速やかに通知すること

  1. 株主となろうとするもの
  2. 新株予約権者となろうとするもの

(d) 株主総会にて取締役が取締役会又は取締役に権利行使期間と権利行使価額決定を委任する旨を説明すること(申請時の書面にてその旨を表明すればよい)

 

制度導入にあたって事前に検討すべき論点

● 制度の利用にあたって事前にスケジューリング及びタスク整理が必要となります。

→ 本制度を利用される場合、株主様との事前のご相談に加え、行政による申請書面及び定款並びに株主間契約の内容確認などがありますので、発行に向けて漏れのないタスク整理及びスケジューリングが必要となります。

● 無期限に募集事項の内容決定を取締役会に委任できるため、株主総会で募集事項決定した際の時価と、取締役会に委任後、実際に割当するタイミングの時価が変動する可能性があり、そのような場合は会計上・税務上それぞれで論点が生じることから弊社のような第三者評価機関にご相談をいただくことをご検討ください。

● ストックオプション・プール制度導入後に新たに株主となろうとするもの、及び新株予約権者に対してストックオプション・プールの存在を通知する必要があります。

● ストックオプションの発行規模に関しては、株主間契約などで発行できる上限が設定されているケースが多く、そもそもの発行可能上限を引き上げたい場合、改めて株主様と交渉が必要となります。

 

総括

令和6年度税制改正による税制適格ストックオプションの要件緩和等、ストックオプションに関わる制度改正が頻繫に行われており、選択肢が大幅に広がった一方で、特例を受けるための要件などがそれぞれ異なることから、ストックオプションの発行を検討している会社様にとって最適な選択肢が見えにくくなっております。
弊社ではこれまでのストックオプション発行支援などのノウハウや知見を活かして、貴社にとって最適と思われる選択肢をご提案することが可能です。
今回のストックオプション・プール制度のみならず、専門的な資本政策のアドバイスが必要でしたらお気軽にご相談ください。

 

 

執筆者紹介


林 俊宏 < ストラテジー・アンド・トランザクション部 コンサルタント >
大学卒業後、SMBC日興証券にて主にストックオプションの管理業務、上場企業の持株会運営サポートに従事。より専門的な支援を行うためプルータス・コンサルティングに入社。入社後は、幅広い企業に対してストックオプションなどのインセンティブ・プランの設計や資本政策に関する提案を行っている。


株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当

〒100-6035 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング35階

TEL:03-3591-8123

※ 本メールは、プルータス・コンサルティング社員が名刺交換および面談させて頂いた皆様にお送りしております。配信停止のご希望は こちら から承ります


Pocket

インセンティブ・プランのレポートを見る

インセンティブ・プランの事例を見る

インセンティブ・プランのソリューションを見る

お気軽にお問い合わせ下さい。
 

-お電話でのお問い合わせ

03-3591-8123平日09:00-19:00

-メールでのお問い合わせ

お問い合わせはこちら