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No.
178
「資本コストや株価を意識した経営の実現」に係る開示企業一覧表の見直しについて(2026年1月号)

はじめに
東京証券取引所(以下、「東証」という。)は、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」(以下、「資本コスト開示」という。)について2026年1月15日から資本コスト開示に係る「開示企業一覧表」の見直しを実施しました。
この見直しは、コーポレートガバナンス報告書(以下、「CG報告書」という。)の資本コスト開示に係る開示内容を東証が毎月更新している「開示企業一覧表」にも掲載する事です。その結果、投資家は、各社の取組みを横並びでまとめて見られるようになり、一覧表の活用は投資判断含めた様々な用途で活用されるものと思料しております。
本レポートでは、この新たな開示の在り方に着目し、開示担当者が留意すべき実務上の要点を専門家の視点から分析します。
1. 「開示企業一覧表」の見直し概要
(1) 「開示企業一覧表」が見直された背景
今回の見直しは上場企業から、一覧表を投資家への積極的なアピールの場としてもっと活用したいという要望と機関投資家から各社の取組み内容を横並びでまとめて見たいという期待が寄せられていた事が背景にありました。
(2) 「開示企業一覧表」に新設される項目とは
見直しの核心は、CG報告書に掲載されている資本コスト開示に係る記載内容が、東証が毎月更新している「開示企業一覧表」に新たに掲載される点です。これによって、投資家は「開示企業一覧表」を見るだけで、各社が資本コストや株価を意識した経営に向けてどのような取組みを取っているかを把握できるようになりました。
(3) どのように記載する事が求められているのか
CG報告書の新設入力欄に「取組みの概要」「主な目標設定」などのサマリー文章の記載が推奨されています。また、適時開示など他資料で詳細を開示している場合も、リンクだけでなく当該資料のサマリーを記載する事が期待されております。
(4) 留意すべき点
CG報告書に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示内容を入力するための新しい入力項目が新設されています。当該入力欄を利用していない場合、東証が毎月公表している「開示企業一覧表」の開示内容欄が空欄となるため、機関投資家より開示に消極的と捉えられてしまう可能性に留意が必要です。
(5) 更新時期について
2026年1月以降にCG報告書を更新した場合は、翌月公表の一覧表から内容が反映されます。
※出所:東証公表資料2025年9月26日より『「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧表の見直しについて』
2. 開示担当者が留意すべきポイント
当該施策によって投資家は、開示企業一覧表上で、各社の取組み内容を横並びで見られるようになり、開示内容の見える化が期待されています。企業側の開示担当者が留意すべき点として比較されやすい環境が整った分、形式的な開示では他社の開示と差が把握しやすくなる事が考えられます。
そのため、「開示企業一覧表」の見直しにおいては「取組みの概要」「主な目標設定」などのサマリーを記載する事が推奨されていることを念頭に資本コスト経営の取組み施策を取締役会等で深く議論することが求められます。その際、どのような視点で施策を考えていくのか、東証が2024年11月21日に公表した「投資者の視点を踏まえたポイント」が大いに参考になりますので下記の表を参照ください。
「現状分析・評価」⇒「取組みの検討・開示」⇒「株主・投資者との対話」の3つの事項について議論を深めていく事が重要なプロセスとなり、その上で取締役会にて具体的な取組みについて意思決定を行い、その内容及び取組み状況についてCG報告書の新設入力欄に「取組みの概要」「主な目標設定」などのサマリー文章の記載する事が望ましい姿であると思われます。
<ご参考>



※出所:東証公表資料2024年11月21日より『投資者の視点を踏まえたポイント』
3. 好開示例ピックアップ
当該Sectionにおいては、東証要請で公表されている「投資者の視点を踏まえたポイント」を的確に捉えた好開示例を取り上げていきます。開示担当者におかれましては、開示updateの際に参考されるとよいと思われます。
- 株式会社アソインターナショナル(スタンダード:9340)
当社は2025年8月8日に資本コスト開示に関してupdateを行いました。参考になる点として、開示形式が「Ⅰ現状分析・評価」「Ⅱ取組みの検討・開示」「Ⅲ株主・投資者との対話」に区分し体系的に記載している点です。これは、東証公表資料「投資者の視点を踏まえたポイント」にも記載されている枠組みであり、この手順に沿って体系的に開示している好開示例といえると思われます。内容についてもエクイティスプレッド(ROE – 株主資本コスト)向上施策、キャッシュ・アロケーケーションの記載、株主との対話の状況等が丁寧にされており、投資者目線を意識した内容であると思われます。
※出所:株式会社アソインターナショナル『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について【2025年6月期末更新版】』(2025年8月8日公表)
- 空港施設株式会社(スタンダード:8864)
当社は2025年5月9日に中期経営計画(見直し2025)の中で、資本コスト開示に関してupdateを行いました。参考になる点として株主資本コストを多面的に分析している点です。
CAPMによる株主資本コストでの算出のみならず、市場評価(現在価値)に基づく株主資本コストも算出も行っており、かつ各種パラメータの開示や当社固有のβ値に係る詳細な説明も記載されております。これらの取組みは、エクイティスプレッド(ROE – 株主資本コスト)を分析する上で投資者から一定の信頼度が得られるものと思われます。東証からもパラメータの開示や複数の算出モデルを用意いて分析する事が推奨されており、当社の開示は「Ⅰ現状分析・評価」における投資者の視点から資本コストを捉えた好開示例といえると思われます。
※出所:空港施設株式会社『中期経営計画(見直し2025)』(2025年5月9日公表)
- 日本ライフライン株式会社(プライム:7575)
当社は2025年6月27日に資本コスト開示に関してupdateを行いました。参考になる点として、資本コストの数値に関して投資者にヒアリングを行い、その内容も考慮しながら開示している点です。また、株主資本コストの計算において各種パラメータを開示し、そのパラメータの数値設定に係る背景も丁寧に説明しており、「Ⅱ取組みの検討・開示」における株主・投資者の期待踏まえた目標設定を行う好開示例であると思われます。
※出所:日本ライフライン株式会社 『コーポレートガバナンス報告書』(2025年6月27日公表)
- 株式会社西武ホールディングス(プライム:9024)
当社は2025年5月14日に資本コスト開示に関してupdateを行いました。参考になる点として「株主・投資者との対話」の状況について詳細に記載されている点です。IRの実施回数のみならず対応者や対話のテーマなど多岐に渡る内容が記載されております。当社では社外取締役も投資者との対話を行っている事、更には、投資者との対話内容が経営戦略の策定や開示情報の充実等にも反映されており「Ⅲ株主・投資者との対話」における投資者とのコミュニケーションを重要視している姿勢を感じ取る事が出来る内容となっております。
※出所:『西武グループの中期経営計画及び資本コストや株価を意識した経営の進捗について』(2025年5月14日公表)
おわりに
2026年1月より開始された「開示企業一覧表の見直し」もあり、資本コスト開示における見える化が進む事が想定されます。企業側が当初掲げた資本コスト経営推進に係る施策がどの程度進捗しているかを積極的に記載していく事で、投資者目線の資本コスト開示に繋がっていくものと思われます。
弊社では「資本コスト分析」や「PBR改善計画策定支援」を積極的に行っており、資本コスト開示に係る高度化をご支援しております。当該業務を通じて本邦上場企業の企業価値向上に微力ながら貢献出来ればと考えております。
執筆者紹介
細田 宏 < コーポレート・カバレッジ部 シニア・マネジャー >
SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経てプルータス・コンサルティングに入社。前職では、上場企業や金融機関の総合RMとして資金調達のオリジネーション業務に従事。
現在は、企業価値評価・資金調達(CB、ワラント)・インセンティブプランのコンサルティング業務を手掛ける。
株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当
〒100-6035 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング35階
TEL:03-3591-8123
※ 本メールは、プルータス・コンサルティング社員が名刺交換および面談させて頂いた皆様にお送りしております。配信停止のご希望は こちら から承ります。
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