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No.
179

2025年の新規上場企業におけるストック・オプションの事例調査(2026年2月号)

2025年も多くの成長企業がIPOを実現しましたが、新規上場社数は前年の84社から減少しました。これは、上場審査基準の厳格化など、IPOを取り巻く環境がより質を重視する方向へシフトしていることを示唆しています。こうした環境下で、資本政策の重要な要素であるストック・オプションの実態はどのように変化したのでしょうか。
今回は、2025年に新規上場した企業を対象に、新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)に記載された新株予約権等の内容を確認し、新規上場企業におけるストック・オプションの最新動向を解説します。

ストック・オプション制度の利用状況

まず、全体的な導入状況です。2025年の東京証券取引所における新規上場社数60社1)他取引所からの上場を含む。テクニカル上場、およびTOKYO PRO Marketへの上場を含まない。以下同様の方法で集計を行いました。のうち、53社がストック・オプションを導入しており、利用割合は88%でした。IPOを目指す多くの企業で役職員向けインセンティブ・プランとしてのストック・オプションの活用が安定的に続いており、制度の定着度がうかがえます。2)集計結果の比率については要点の把握を趣旨として、少数点以下は四捨五入の上表示しています。以下同様の方法で集計を行いました(潜在株式比率の平均値及び中央値の表示を除く)。

ストック・オプション制度の発行形態別の利用状況

一方、発行形態の内訳には変化が見られます。2019年以降の新規上場企業における、発行形態別の利用状況を以下にまとめました。括弧内はストック・オプション制度を利用している企業数に対する各制度の採用割合です。

ストック・オプション導入企業53社における利用状況を詳しく見ると、最も多く採用されているのは無償ストック・オプション(税制適格ストック・オプション)で、利用率は 94%でした。例年同様、9割を超える企業が本制度を採用しており、IPOを目指す企業にとって最も標準的なインセンティブ・プランとして定着している状況がうかがえます。この背景には、2024年度の税制改正による年間行使価額の上限引上げといった、制度面での利便性向上が寄与していると推察されます。さらに、2023年5月に国税庁が示した通称「セーフハーバールール3)制度詳細に関するご質問につきましては税理士・会計士などの専門家にお問い合わせ下さい。により、税務上の株価評価における判断がしやすくなったことも、企業が本制度を選択する追い風になっていると考えられます。

次いで利用率が高いのが有償ストック・オプションで、42%の企業が導入しています。前年と比較しても上昇傾向にありますが、特筆すべきは、その導入企業のほぼ全てが税制適格ストック・オプションと組み合わせて発行している点です。有償ストック・オプション単独での利用は限定的であり、主に他制度を補完する形で活用されている実態がうかがえます。

一方で、信託型ストック・オプションの利用率は8% にとどまり、導入は減少傾向にあります。国税庁の見解等を経て課税関係が整理された結果、実務の選択肢がより確実性の高いスキームへとシフトしたと言えるでしょう。

ストック・オプション制度の発行形態別の組合せ状況

集計を開始した2019年以降の新規上場企業におけるIPO時点の新株予約権を用いたインセンティブ・プランの発行形態を整理しました。単一制度だけでなく、複数制度を組み合わせる事例が定着しています。導入企業のうち最も多いのは「無償ストック・オプション(税制適格ストック・オプション)のみ」で全体の約半数を占めました。次いで「無償ストック・オプション(税制適格ストック・オプション)と有償ストック・オプションの併用」が続きます。

この背景には、税制適格要件の緩和が進んだ現在においてもなお、制度の枠組みを超えた設計ニーズが存在しているものと考えられます。具体的には、以下の2点が挙げられます。第一に、金額上限の制約への対応です。 税制適格ストック・オプションには、年間権利行使価額に上限(原則1,200万円、設立年数等により最大3,600万円)があります。しかし、IPO直前のラウンドや時価総額が大きくなった段階ですと、当該枠内ではインセンティブとして不十分なケースがあります。有償ストック・オプションにはこのような金額制限がないため、キーマンに対して十分なキャピタルゲイン期待を提供するための手段として、税制適格と組み合わせて活用されていると推察されます。第二に、属性別の制度設計です。 税制適格ストック・オプションは主に社内の取締役・従業員向けに設計されていますが、税制適格の要件を満たすことが実務上難しい社外監査役や社外協力者に対して、有償ストック・オプションを活用している事例が散見されます。

このように、ステークホルダーごとに最適なインセンティブ・プランを設計するハイブリッド型の運用が、実務上の有力な選択肢となっています。

潜在株式比率

直近7年間の新規上場企業における潜在株式比率4)ストック・オプションを活用している企業について、有価証券報告書提出時の発行済株式総数に対する新株予約権数の割合。これに対し、発行済株式総数と新株予約権数の合計に対する新株予約権数の割合を潜在株式比率とする場合も存在します。をまとめました。ストック・オプション導入企業53社のうち、潜在株式比率が15%以上だったのは7社であり、最大値は2025年4月上場のデジタルグリッド株式会社の25%でした。全体の傾向としては、平均値は9.2%で昨年比微減となり、中央値は9.4%で昨年比微増となりました。一般的にIPO時の目安は10%~15%程度と言われていますが、今回の調査結果ではそれらをやや下回る水準で着地しています。高水準の事例も一部に見られる一方、全体としては投資家の目線を意識し、希薄化率を適正範囲内に収める規律ある資本政策の傾向が読み取れます。

おわりに

2025年の調査結果からは、「無償ストック・オプション(税制適格ストック・オプション)」が盤石な地位を占める一方で、補完的に「有償ストック・オプション」を活用するハイブリッド型がより浸透していることが確認されました。

特に有償ストック・オプションの発行にあたっては、発行時点でのオプション価値(公正な評価額)に基づく適正な払込金額の設定が不可欠です。評価額と払込金額に乖離がある場合、有利発行等の論点が生じる可能性があるため、慎重な検討が求められます。市場環境が厳選される今だからこそ、監査法人や投資家に対して合理的に説明できるロジックと、適正な算定の重要性が一層高まっていると言えるでしょう。

弊社では、年間1,000件を超える評価実績に基づき、最新の実務動向を踏まえた資本政策の立案・評価を支援しております。ご検討の際はお気軽にご相談ください。
なお、2025年に新規上場した全60社の有価証券報告書を集計し、各社ごとのデータベースを保有しています。
上記以外の詳細なデータについてお知りになりたい方は、お問合せフォームよりご連絡ください。

 

執筆者紹介

石田 望 < エクイティ・アドバイザリー部 コンサルタント >
大学卒業後、官公庁にて政策の企画立案や予算編成、税制改正要望に従事したのち、プルータス・コンサルティングに入社。
現在はストックオプションを用いたインセンティブ・プランを中心に資本政策に関するアドバイザリー業務に従事している。


株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当

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1. 他取引所からの上場を含む。テクニカル上場、およびTOKYO PRO Marketへの上場を含まない。以下同様の方法で集計を行いました。
2. 集計結果の比率については要点の把握を趣旨として、少数点以下は四捨五入の上表示しています。以下同様の方法で集計を行いました(潜在株式比率の平均値及び中央値の表示を除く)。
3. 制度詳細に関するご質問につきましては税理士・会計士などの専門家にお問い合わせ下さい。
4. ストック・オプションを活用している企業について、有価証券報告書提出時の発行済株式総数に対する新株予約権数の割合。これに対し、発行済株式総数と新株予約権数の合計に対する新株予約権数の割合を潜在株式比率とする場合も存在します。

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