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125

非上場株式の新株予約権の評価について/セミナーのご案内(2021年6月30日号)

Topic1. ► 非上場株式の新株予約権の評価について


新株予約権を有償で発行する取引においては、発行会社の会計処理、会社法上の有利発行規制の観点等から公正価値評価が必要となる。公正価値評価の際に採用される評価モデルのうち、実務で広く使われているものの一つにブラック・ショールズモデルがあり、これは評価に関する実務者の間における共通認識となっている。
但し、ブラック・ショールズモデルは完全市場を前提としており、市場参加者はいつでも、何株でも、制約なしに取引が可能であることが条件となっている。上場株式であれば(完全市場からは程遠いものの)、少なくとも市場での取引が可能であり市場価格も公開されているが、非上場株式はそもそも取引価格が存在しない場合もある。
したがって、ブラック・ショールズモデルを用いて非上場株式のオプションを評価すると、過大評価に繋がる危険性をはらんでいる。
ブラック・ショールズモデルの前提を満たすことができない非上場株式のストック・オプションはどのように評価されるべきか、本稿では理論的なアプローチと実際の評価事例も紹介する。

 

 
 

第一章 オプション評価の概要
 
オプションの価値には本源的価値と時間的価値がある。
実務家の間で確立したオプション評価手法はブラック・ショールズモデルであり、二項モデルなども基本的にはブラック・ショールズモデルと同じ考え方である。
ブラック・ショールズモデルは、オプション満期日の価格にリターンが影響を受けないデルタヘッジが可能であることを前提としており、デルタヘッジから発生するキャッシュフローの現在価値をオプションの価値とするものである。
ブラック・ショールズモデルを利用する前提として、「完全市場、値動きのランダム性、取引の連続性」が求められる。


第二章 不完全市場、非上場の新株予約権評価の考え方
 
ここでは、上場しているが流動性が潤沢ではない場合を「不完全市場」、上場していない(取引市場がない)場合を「非上場」と分けて、それぞれの評価の考え方を説明する。
 
⮚ 不完全市場:上場個別株式に当てはまるケースがしばしば散見されるが、取引量によりマーケット・インパクトが発生する事象を考慮した評価が確立している。
 
⮚ 「完全市場、値動きのランダム性、取引の連続性、デルタヘッジ可能」という前提から外れる株価モデルを想定する場合はブラック・ショールズモデルとは異なる評価メソッドを作らなければならないが、現在においてそのような確立された手法は存在しない。
 
⮚ 非上場:極端に流動性のない非上場株式の新株予約権において、そのデルタヘッジによるキャッシュフローは完全市場に比べ著しく小さくなり、時間的価値の見積もりは困難である。一方、行使価格と株価の差から生じる本源的価値については、一定のディスカウントを覚悟して売却できれば実現可能なものと考える。


第三章 株価条件付きストック・オプション評価の手法
 
スタートアップ企業が多く採用している「ノックアウト・オプション」は、一定条件下でオプションが消滅する条項を設定した仕組みだが、そのあるべき評価方法を解説する。
 

1. 非上場企業の株価モデル
不定期にしか取引が発生しない不完全市場において、株価はどのように動くと前提を置けばよいのだろうか。過去オプションの評価をめぐり、筆者は様々な前提や見解に出会ったので、その一部を紹介する。
 
● 半年に一度株価が観察されるモデル(モデル1)
「株価自体はブラック・ショールズモデルや二項モデルが前提としている通りに動いているが、普段は取引がなく可視化されないので、便宜的に半年に一度だけ取引(観察)されることにする。二項モデルの一期間を半年にする。」


 

● 一定期間後株価が連続的に観察されるモデル(モデル2)
「上場までは取引がないので株価は観察されないが、水面下ではブラック・ショールズモデルの前提にしたがって「見えない株価」が変動している。また上場以降(ここでは1年後)は連続的に取引が観察される。」
株式上場を控えた企業の株価において、時々主張されるモデルである。

(実線:株価変動、点線:「見えない株価」の動き)

 

・・・続く

 

Topic2. ► セミナー・イベント情報

京大MBA2021 短期集中講座「企業価値評価とファイナンス ―ESGとサステナブルファイナンス―」



本講座には、弊社代表 野口真人と常務取締役 山田昌史が講師として登壇いたします。

 

<講座概要>
京都大学MBAが開講しているファイナンス関連の講座(基礎講座、専門講座、実務講座)の中から、短期集中として有益な部分を集約して体系化し、実務科学的なパートを組合せたオリジナル講座です。
今回が4回目となる本講座は、延べ120名以上の方に受講いただいており、グローバルスタンダードなファイナンスと企業価値評価(バリュエーション)の理論と考え方を解説し、欧米や日本のMBAで用いるケーススタディ、Excelによる財務モデル(モデリング)演習を通じて、実践的なバリュエーションと財務的意思決定のトレーニングを行います。

 

<日程>  2021.8.18(水) 〜 2021.10.21(木)、全8回

開催方法>オンライン・対面

 

皆さまのご参加を、心よりお待ち申し上げます。

 

 

 


執筆者紹介


野口 真人 < 代表取締役社長 / 京都大学 経営管理大学院 特命教授>
京都大学経済学部卒業。みずほ銀行(旧富士銀行)、JP.モルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。デリバティブが目新しかった時代から一貫して事業法人や大手機関投資家に対して運用手法をアドバイス、その間ユーロマネー誌によるアンケートにて3度最優秀デリバティブセールスに選ばれる。2004年に株式会社プルータス・コンサルティングを設立。
主な著書に「ストック・オプション会計と評価の実務」(共著、税務研究会出版局)、「ストックオプション儲けのレシピ」(同友館)、「種類株式・新株予約権の活用法と会計・税務」(中央経済社)、「戦略資本政策(新時代の新株予約権、種類株式活用法)」(中央経済社)。


株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当

〒100-6035 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング35階

TEL:03-3591-8123

※ 本メールは、プルータス・コンサルティング社員が名刺交換および面談させて頂いた皆様にお送りしております。配信停止のご希望は こちら から承ります


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