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M&A・組織再編

No.
130

公正M&A指針後2年間における特別委員会/フェアネス・オピニオン実務の変化(2021年11月30日号)

Topic. ► 公正M&A指針後2年間における特別委員会/フェアネス・オピニオン実務の変化


 
「公正なM&Aの在り方に関する指針」が公表され2年が経過しました。そこで昨年7月に行った事例調査を更新し、特別委員会及びフェアネス・オピニオンの実務が実際に変化しているかを改めて分析しました。
  

1. 2019年6月28日 公正なM&Aの在り方に関する指針公表後における実務変化

2019年6月の公正なM&A指針公表によりMBO及び親子上場会社における公正性担保措置に関する望ましいプラクティスの在り方が指針化されて以降、実務に変化が生じたかについて昨年2020年7月にも調査しました。その調査では、公正なM&A指針公表後において特別委員会実務やフェアネス・オピニオン実務が実際に変化しているとの調査結果が得られました。本分析はその後の1年間を追跡調査するものです。
関連する調査として、東京証券取引所では、当市場における上場廃止を目的としたMBO及び支配株主による買収事例に関する調査が行われています。「特別委員会の設置時期」や「委員の報酬体系」など、10項目に及ぶ開示情報の集計を行うことで、当該指針に基づいた情報開示の状況がまとめられています。
本分析では、東証が集計対象としていない項目を補完することを目的に、日本国内の全株式市場に上場する企業によるTOB事例について、以下の項目で集計・調査を行いました。

 

➀ 特別委員会の構成員
特別委員会の構成は従来M&Aについて経験値が高く知見の豊富な弁護士や株式価値算定理論に長けた財務アドバイザーが選任される実務が定着しており、指針公表前においての数年間においても概ねすべての事案でそのように運用されてきました。
一方、今回の指針では『ベストプラクティスとしては、特別委員会は、委員として最も適任である社外取締役のみで構成し、M&Aに関する専門性は、アドバイザーから専門的助言を得ること等によって補うという形態が最も望ましい』とされています。

 

➁ フェアネス・オピニオン
独立第三者の専門機関が、想定される取引価格に対して公正性に関する意見を表明するフェアネス・オピニオンについて、『具体的な取引条件が対象会社の一般株主にとっての公正性であるという点において、株式価値算定書とは異なるものであり、対象会社の価値に関するより直接的で重要性の高い参考情報となり得るため、取引条件の形成過程において構造的な利益相反の問題および情報の非対称性の問題に対応する上でより有効な機能を有し得る』とされています。
フェアネス・オピニオンを取得する実務は欧米では一般的であり、海外機関投資家からすると日本では取得されないことに対して違和感を持たれるとの声もあります。フェアネス・オピニオン実務のさらなる活用が期待されています。

 
 

2. 事例調査

指針公表後2年間のTOBによる該当事例は50件でした。 今回は➀-1 特別委員会の構成員、➀-2 アドバイザーの起用、➁フェアネス・オピニオンの取得 に焦点を当ててまとめています。
 

    ※1 取:社外取締役、監:社外監査役、弁:弁護士、会:会計士、金:金融機関出身者
       数字は人数を示す
    ※2 FA:フィナンシャルアドバイザー、LA:リーガルアドバイザー
    ※3 取得主体を示す
    ※4 太枠内:前回から追加した事例

 

3. まとめ

本執筆時点の公表事例50件を分析したところ以下の傾向が見受けられました。
 
➀-1 特別委員会の構成員
指針公表前は外部専門家が中心でしたが、指針に準拠して社外役員を委員に起用した事例は50件中47件でした。そうでない事例も社外役員が利害関係等の影響により適任でない旨を開示資料に記載するなど指針への配慮が見受けられました。
 
➀-2 アドバイザーの起用
指針公表前は委員会がアドバイザーを別途起用する事例は極めて稀でした。指針公表後においては50件中16件の事例で委員会が別途アドバイザーを起用していました。
 
➁ フェアネス・オピニオン
指針公表後においては15件の事例においてフェアネス・オピニオンが合計20件取得されています。フェアネス・オピニオンについては指針前後の具体的な比較が難しいものの指針も考慮して検討される事例は大幅に増加していると考えられます。
 
➀-2委員会がアドバイザーを起用した16件のうち、➁フェアネス・オピニオンが取得された事例をまとめると11件となります。委員会がアドバイザーを起用してより慎重にプロセス形成した事案では多くのケースでフェアネス・オピニオンまで取得していたといえます。

 

4. おわりに

今回の調査を通じて、公正M&A指針後の特別委員会実務における変化は、前回の調査対象である指針公表後1年間に引き続き、継続していることを確認することができました。
委員会がアドバイザーを起用した事例(➀-2)、若しくはフェアネス・オピニオンが取得された事例(➁)という観点でいえば50件中20件が該当しますが、弊社ではこのような事案の半数以上に関与している結果となっています。
第三者評価機関の役割が一層重視される中、引き続き公正なプロセスの実務形成に貢献できるよう取り組んでまいります。

 

執筆者紹介


石坂 和征 < フィナンシャル・アドバイザリー部 コンサルタント >
早稲田大学卒業後、証券会社を経て、プルータス・コンサルティングに入社。上場会社同士のM&Aに対するフィナンシャル・アドバイザーを担当するほか、大手企業からベンチャー企業まで様々なフェーズの資本政策関連のアドバイザリー業務及びバリュエーション業務に従事し、多数の案件を手掛ける。


株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当

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