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M&A・組織再編

No.
138

公正なM&A指針公表後3年間における特別委員会/フェアネス・オピニオン実務の変化(2022年07月29日号)

Topic. ► 公正なM&A指針公表後3年間における特別委員会/フェアネス・オピニオン実務の変化


「公正なM&Aの在り方に関する指針」が公表され3年が経過しました。そこで昨年11月に行った事例調査を更新し、特別委員会及びフェアネス・オピニオンの実務が実際に変化しているかを改めて分析しました。
  

1. 2019年6月28日 公正なM&Aの在り方に関する指針公表後における実務変化

2019年6月の公正なM&A指針公表によりMBO及び親子上場会社における公正性担保措置に関する望ましいプラクティスの在り方が指針化されて以降、実務に変化が生じたかについて昨年2021年11月にも調査を実施しました。その調査では、公正なM&A指針公表後において特別委員会実務やフェアネス・オピニオン実務が実際に変化しているとの調査結果が得られました。本分析はその後の1年間を追跡調査するものです。
本分析では、日本国内の全株式市場に上場する企業によるTOB事例における「特別委員会の構成員」「アドバイザーの起用の有無」「フェアネス・オピニオンの取得の有無」について調査し、事例ごとに一覧でご確認いただけるよう、集計を行いました。 
なお、関連する調査として、東京証券取引所では、東京証券取引所市場に上場する企業による、上場廃止を企図したMBO及び支配株主による従属会社の買収事例について、公正なM&A指針公表後における当該指針に基づいた充実した情報開示の状況に関する調査を行っています。

 

➀ 特別委員会の構成員
指針では、特別委員会の構成は『ベストプラクティスとしては、特別委員会は、委員として最も適任である社外取締役のみで構成し、M&Aに関する専門性は、アドバイザーから専門的助言を得ること等によって補うという形態が最も望ましい』とされています。
 

➁ フェアネス・オピニオン
独立第三者の専門機関が、想定される取引価格に対して公正性に関する意見を表明するフェアネス・オピニオンについて、『具体的な取引条件の対象会社の一般株主にとっての公正性であるという点において、株式価値算定書とは異なるものであり、対象会社の価値に関するより直接的で重要性の高い参考情報となり得るため、取引条件の形成過程において構造的な利益相反の問題および情報の非対称性の問題に対応する上でより有効な機能を有し得る』とされています。
フェアネス・オピニオンを取得する実務は欧米では一般的であり、海外機関投資家からすると日本では取得されないことに対して違和感を持たれるとの声もあります。フェアネス・オピニオン実務のさらなる活用が期待されています。

 
 

2. 事例調査

指針公表後3年間のTOBによる該当事例は80件でした。 今回は①-1 特別委員会の構成員、①-2 アドバイザーの起用、②フェアネス・オピニオンの取得 に焦点を当ててまとめています。
※枠内(2021/07/27~)が新たに追加した項目になります。
 

    ※1 取:社外取締役、監:社外監査役、弁:弁護士、会:会計士、金:金融機関出身者
       数字は人数を示す
    ※2 FA:フィナンシャルアドバイザー、LA:リーガルアドバイザー
    ※3 取得主体を示す

 

3. まとめ

本執筆時点の公表事例80件を分析したところ以下の傾向が見受けられました。
 
➀-1 特別委員会の構成員
指針に準拠して社外役員を委員に起用した事例は80件中77件でした。
なお、指針公表後3年目となる2021年6月28日~2022年6月27日における公表事例30件については、全ての事例で社外役員が委員に起用されております。

 
➀-2 アドバイザーの起用
指針公表前は委員会がアドバイザーを別途起用する事例は極めて稀でした。指針公表後においては80件中23件の事例で委員会が別途アドバイザーを起用していました。
 
➁ フェアネス・オピニオン
指針公表後においては18件の事例においてフェアネス・オピニオンが合計23件取得されています。
 
上記①-2及び②から、一定規模の取引や株主に海外投資家が含まれるケースなど、より慎重なプロセスの検討が必要となる事例においては、多くのケースで「アドバイザーの起用」若しくは「フェアネス・オピニオンの取得」がなされることが推察されます。
なお、①-2及び②の事例については、指針公表後3年間引き続き増加傾向にあります。


 

4. おわりに

今回の調査を通じて、公正なM&A指針公表後の特別委員会実務における変化は、前回の調査対象である指針公表後2年間に引き続き、継続していることを確認することができました。
委員会がアドバイザーを起用した事例(①-2)、若しくはフェアネス・オピニオンが取得された事例(②)という観点でいえば80件中27件が該当しますが、弊社ではこのような事案の約半数に関与している結果となっています。
第三者評価機関の役割が一層重視される中、引き続き公正なプロセスの実務形成に貢献できるよう取り組んでまいります。

 

執筆者紹介


石坂 和征 < フィナンシャル・アドバイザリー部 コンサルタント >
早稲田大学卒業後、証券会社を経て、プルータス・コンサルティングに入社。上場会社同士のM&Aに対するフィナンシャル・アドバイザーを担当するほか、大手企業からベンチャー企業まで様々なフェーズの資本政策関連のアドバイザリー業務及びバリュエーション業務に従事し、多数の案件を手掛ける。


株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当

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