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「公正なM&A指針」後1年間における特別委員会実務の変化(2020年7月31日号)

Topic. ► 「公正なM&A指針」後1年間における特別委員会実務の変化

「公正なM&A指針」後1年が経過しました。そこで2月に行った事例調査を更新し、特別委員会実務が実際に変化しているかを改めて分析しました。

 

1. 2019年6月28日 公正なM&Aの在り方に関する指針公表

2007年9月に策定された「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」を全面的に改訂する形で、MBOにおける公正性担保措置に関する望ましいプラクティスの在り方が指針化されました。

 

 ① 特別委員会の構成員

特別委員会の構成は従来M&Aについて経験値が高く知見の豊富な弁護士や株式価値算定理論に長けた財務アドバイザーが選任される実務が定着しており近年の全事案でそのように運用されてきました。一方、今回の指針では『ベストプラクティスとしては、特別委員会は、委員として最も適任である社外取締役のみで構成し、M&Aに関する専門性は、アドバイザーから専門的助言を得ること等によって補うという形態が最も望ましい』とされています。

 ② フェアネス・オピニオン

独立第三者の専門機関が、想定される取引価格に対して公正性に関する意見を表明するフェアネス・オピニオンについて、『具体的な取引条件の対象会社の一般株主にとっての公正性であるという点において、株式価値算定書とは異なるものであり、対象会社の価値に関するより直接的で重要性の高い参考情報となり得るため、取引条件の形成過程において構造的な利益相反の問題および情報の非対称性の問題に対応する上でより有効な機能を有し得る』とされています。フェアネス・オピニオンを取得する実務は欧米では一般的であり、海外機関投資家からすると日本では取得されないことに対して違和感を持たれるとの声もあります。フェアネス・オピニオン実務のさらなる活用が期待されています。

 

2. 事例調査
指針公表後のTOBによる該当事例は、執筆時点(2020年7月20日)で24件でした。今回は①-1 特別委員会の構成員、①-2 アドバイザーの起用、②フェアネス・オピニオンの取得 に焦点を当ててまとめています。

 

    ※1 取:社外取締役、監:社外監査役、弁:弁護士、会:会計士、金:金融機関出身者
       数字は人数を示す。
    ※2 FA:フィナンシャルアドバイザー、LA:リーガルアドバイザー
    ※3 取得主体を示す。
    ※4 太枠内:前回から追加した事例

 

3. まとめ
本執筆時点の公表事例24件を分析したところ以下の傾向が見受けられました。 ①-1 特別委員会の構成員
指針公表前は外部専門家が中心でしたが、指針に準拠して社外役員を委員に起用した事例は24件中23件でした。そうでない事例も社外役員が利害関係等の影響により適任でない旨を開示資料に記載するなど指針への配慮が見受けられました。
 ①-2 アドバイザーの起用
指針公表前は委員会がアドバイザーを別途起用する事例は極めて稀でした。指針公表後においては24件中10件の事例で委員会が別途アドバイザーを起用していました。
 ② フェアネス・オピニオン
指針公表後においては8件においてフェアネス・オピニオンが合計11件取得されています。フェアネス・オピニオンについては指針前後の具体的な比較が難しいですが指針も考慮して検討される事例は増加していると考えられます。

 

①-2にある通り、委員会がアドバイザーを起用した10件のうち、②フェアネス・オピニオンが取得された事例をまとめると6件となります。委員会がアドバイザーを起用してより慎重にプロセス形成した事案では多くのケースでフェアネス・オピニオンまで取得していたといえます。

 

4. おわりに
今回の調査を通じて、「公正なM&A指針」後の特別委員会実務に確実な変化が起きていることを確認することができました。
委員会がアドバイザーを起用した事例(①-2)、フェアネス・オピニオンが取得された事例(②)という観点でいえば12件が該当します。弊社ではこのような事案の半数及びフェアネス・オピニオン取得事例の半数以上に関与している結果となっています

第三者評価機関の役割が一層重視される中、引き続き公正なプロセスの実務形成に貢献できるよう取り組んでまいります。

 

執筆者紹介


山田 昌史 < 取締役 / 米国公認会計士・京都大学 経営管理大学院 客員教授 >
早稲田大学 商学部卒業。組織再編・種類株式等の有価証券発行を中心に大手企業からベンチャー企業まで様々なフェーズの資本政策関連のアドバイザリー業務に従事し、多数の案件を手掛ける。多数の上場会社の公開買付け、株式交換、スクイーズアウトによる完全子会社化、共同株式移転などの組織再編アドバイザリーを担当するほか、フェアネス・オピニオン業務、第三者割当てに係る資金調達アドバイザリー、非上場会社の資本構成の再構成コンサルティング、時価発行新株予約権信託などのインセンティブ・プラン導入コンサルティングなどを行う。


株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当

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