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116
M&A – アーンアウト条項の公正価値評価(2020年11月30日号)

Topic. ► M&A – アーンアウト条項の公正価値評価
M&Aで対象会社の株式を取得する際に、買収後に対象会社が一定の目標を達成した場合、買手企業が売手企業に対して追加の支払いをする、いわゆる「アーンアウト条項」を条件に含めるケースがある。
アーンアウト条項を締結することは、将来の支払いの可能性を負う義務であり、買収企業はその評価額を適正に見積もって取引条件を判断していく必要がある。EO条項の経済的価値の十分な検討を行わずにSPAを締結して過度な債務を負担した場合には、買収会社の取締役は善管注意義務に問われる可能性もあるだろう。
また、国内のIFRS導入企業の株式取得の会計処理においては、アーンアウト条項は条件付対価と整理され、その内容によっては公正価値を取得原価に含めることも求められる。
「取得企業は条件付対価の取得日公正価値を、被取得企業との交換で移転された対価の一部として認識しなければならない」とされている。したがって、追加支払いの可能性がある部分も含めて公正価値評価して取得原価を算定する。資本に分類されない条件付対価については、その後取得日後の毎決算日に、条件付対価の公正価値を評価してその変動を損益に認識することになる。
EO条項の公正価値評価は、これまでの実務において評価の専門家によって様々な手法がとられて定まったものがなかったが、2019年2月に米国のThe Appraisal Foundationという団体が、「VALUATIONS IN FINANCIAL REPORTING VALUATION ADVISORY 4: VALUATION OF CONTINGENT CONSIDERATION: Feb 2019(以下、Appraisal Foundationガイダンス)」を公表してから、これに依拠したアプローチに実務が収斂してきている。
弊社でも、IFRS導入企業からEO条項の公正価値評価を依頼されるケースでは、Appraisal Foundationガイダンスにも沿った方式で評価しており、その評価結果がクライアントの会計処理に採用されている。
EO条項の評価はオプション・プライシングモデルを利用することが必要となり複雑なため、実際の取引時に評価の専門家の助言を仰いで、その後の会計処理等も見据えて取引条件の交渉を行うことがM&Aのベストプラクティスとなってきている。
執筆者紹介
岡野 健郎 < 執行役員 マネージング・ダイレクター >
M&A・組織再編を目的とした事業価値評価、株式価値評価、株式交換・合併比率の算定、フェアネスオピニオンの提供、特別委員会への財務アドバイザリー、財務報告目的の評価、税務目的の評価、優先株式・新株予約権の評価などのサービスを、20年以上にわたって提供している。2017年にプルータスに参画以前は、PwC(東京及びロンドン事務所)のバリュエーション部門で、国内案件のみならず、クロスボーダー案件も数多く手がけた。PwC以前は、大手事業会社の財務部10年、スターンスチュワート社でのEVA導入等の財務コンサルティング業務2年の経験を有している。
株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当
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