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No.
21
MBO、完全子会社化において取締役が留意すべきポイント解説
〈要約〉
近年、会社の経営陣が株主から株式を取得する、いわゆるMBOや、上場子会社の親会社による完全子会社化など、対象会社の取締役と株式の売主となる一般株主の間に利益相反構造を有している取引が増加している。
平成19 年9月に、経済産業省から企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針(以下、「MBO指針」という。)が公表されて以降、MBOなどの利益相反構造を有する取引が行われる際には、利益相反関係を軽減するための措置として、概ねMBO指針に沿った施策を講じる実務が定着しつつある。しかし、どこまでの措置を講じれば問題ないかは個々の事案の状況によって異なるため、必ずしも一律の対応を行えば十分であるといった性格の問題ではない。
本レポートにおいては、MBO、親会社による完全子会社化等の利益相反構造を有している取引において、取締役が留意すべき実務上のポイントについて、実際に利益相反性が問題になった事例や最近の実務の傾向等を踏まえ検討する。
➢MBOにおいては、買収側に属する取締役は、企業価値最大化という役割と買収者という役割を保持することになり、当該取締役の立場により程度は異なるが、利益相反構造が必然的に生じる。また、このことは、上場子会社の親会社による完全子会社化にも同様のことがいえる。
➢ MBOや親会社による完全子会社化に際しては、利益相反回避措置を講じなければならず、これを怠って買収側の取締役が対象会社の意思決定に影響を及ぼすような行為が行われた場合、MBOの頓挫や事後的な訴訟が生じるおそれがある。
➢取締役と株主との利益相反関係が潜在的に存在するMBOや支配株主による完全子会社化においては、公正な手続きを通じて、株主が受けるべき利益が損なわれることのないよう十分に配慮すべきである。
➢利益相反取引に関する実務上の対応は、MBO指針で述べられている「MBOを行う際に尊重される原則」や取引所規則に基づいて行われており、具体的には、独立した算定機関からの算定書の入手や特別委員会の設置等の措置が講じられている。
➢実務上、MBO 等を行う際の利益相反回避措置については、様々な論点が存在しており、事案ごとに検討する必要がある。そのため、実際に行う際には、検討の初期段階から手続き、価値算定等の専門家であるアドバイザーを選定し、当該アドバイザーからの意見を聴取し、利益相反性を最大限軽減する措置を検討することが重要となる。
以上
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