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No.
4
第三者割当増資に関する有価証券上場規程(新ルール)施行後の状況について
<はじめに>
東証は昨年8月に第三者割当増資等に関連する有価証券上場規程等を改正し(他の証券取引所も昨年末までに同様の対応を実施)、エクイティ・ファイナンスに関する一定のガバナンスと適時開示を強化した。さらに、「企業内容等の開示に関する内閣府令」も改正され、今年の2月から第三者割当増資等に係る規制及び広範な情報開示が要求されている。このようなことから、証券取引所の新ルール適用開始後から平成22年4月末までの期間における期間における第三者増資等の対応状況について調査を実施した。
<要 約>
- 希釈化率25%以上となる第三者割当増資等は、①第三者意見の入手又は、②株主総会決議などの株主の意思確認いずれかを実施することになったが、調査対象期間における第三者割当増資等の総数121件中54件が希釈化率25%以上であった。
- 希釈化率25%以上となる第三者割当増資等の54件中、第三者意見の入手による対応が46件(その内6件は、さらに株主総会決議も実施*)、株主総会決議7件(第三者意見を併用した6件は含んでいない。)であり、第三者意見の入手による対応が多かった。株主の意思確認をしない第三者意見は、実質的な公正性の判断となり得るか否かの検証が必要であろう。
- 第三者意見を入手した19件中5件は、第三者意見に加えて株主の意思確認も行っている。この場合の株主の意思確認は、第三者意見では一部入手できない資料があったことを理由にするなどの個別の理由があるものから、念のため総会決議をしたものまで状況は様々である。
- 取締役会のみで公正発行した106件中98件は、第三者割当増資等が公正であることについて監査役から意見を入手していた。その他に弁護士から意見を入手したものが2件あり、意見を入手していないのは6件であった。有利発行で、上記の第三者意見以外に発行価格決定目的で第三者の評価を取得したのは、11件中1件であった。有利発行の場合であっても、公正価値との乖離幅によっては、株主の判断が変わることもあるため、第三者評価を入手し、評価結果との乖離幅を開示する等の対応が望まれる。
- 普通株式増の場合における基準株価の観察期間については、決議日前日終値を基準株価観察期間に設定をしているのが71件中30件であり、ディスカウント率については観察期間により決まった基準株価から5%以上10%以下としているのが、71件中35件であった。
PLUTUSレポート1月号の『第三者割当増資等で第三者評価の重要性が高まっているのはなぜか。』では、第三者割当増資等に関する新ルールを解説した。今回は、この新ルール適用開始日から平成22年4月末までの期間を対象に新ルールの対応状況を分析した。
改めて第三者割当増資等に関する取引所の新ルールの主なポイントをまとめると次の通りである。
1. 新ルール適用後の各取引所の第三者割当増資等
※ 1 調査対象期間:各取引の有価証券上場規程改正所施行日から平成22年4月末日までに第三者割当増資を発表した案件とする。
※ 2 1社が2つの異なる資金調達をした場合、2件としている。
※ 3 新ルール抵触件数は、各取引所の新ルール施行後の希釈化率25%以上の第三者割当増資等の件数である。
2.希釈化率25%以上(54件)の対応状況
* 他に割当予定先が指名する取締役候補が株主総会で選任されることを第三者割当増資等の条件とする方法により、株主意思を確認するものが1件あった。
株主総会へ付議したものは、14件(内、株式と新株予約権発行を同時に付議したもの9件)であった。公正発行としての取締役会決議では、全て意見を入手することで対応している。また、特別委員会を設置するケースでは、社外取締役、弁護士、公認会計士、税理士その他有識者から構成されている。なお、特別委員会の意見を入手しているが、さらに、第三者割当等について株主総会に付議したものが6件ある。
3.新ルールによる第三者割当増資等の適時開示対応(上記2のケースを含む)
(1) 有利発行/公正発行の状況
※ 1 うち、割当予定先が指名する取締役候補が株主総会で選任されることを第三者割当増資等の条件とする方法により、株主意思を確認するものであった。
(2) 取締役会決議(公正発行)106件の意見入手状況
新ルールでは、「払込金額の算定根拠及びその具体的な内容」を開示することが要請されている。また、取引所が必要と認める場合は、「払込金額が割当先に特に有利でないことに係る適法性に関する監査役又は監査委員会の意見等を併せて開示しなければならない。」としている。公正発行100件中98件は監査役から意見を入手し、監査役以外からの意見を入手したケースとしては、弁護士から意見を入手したケースが2件あった。また、意見を取らないケースは、6件であった。
(3) 第三者評価の入手状況
意見書の入手以外に、払込金額の決定の参考に資する第三者評価の入手状況を調査した。
① 有利発行の場合
有利発行の場合においては、第三者評価を入手したケースは1件のみであり、市場株価(直前6ヶ月間の終値平均)に対して57%のディスカウントによる払込金額とするものであった(後述の4ディスカウント率参照)。有利発行の場合であっても、公正価値との乖離幅によっては、株主の判断が変わることもあるため、第三者評価を入手し、評価結果との乖離幅を開示する等の対応が望まれる。
なお、第三者評価がない普通株式の有利発行4件の市場株価に対するディスカウント率は、9%が1件、0%が2件、プレミアム率27%が1件である。
4.第三者割当の普通株式増資の場合における基準株価の観察期間及びディスカウント率(プレミアム率)
<基準株価観察期間>
<ディスカウント率>
普通株式の第三者割当増資における基準株価の観察期間は、決議日前日の株価30件が一番多く、1ヶ月平均株価が15件、3ヶ月平均の株価が12件となった。
また、基準株価に対しての発行価格のディスカウント率については、18件がディスカウント率5%~10%を採用し、17件が10%を採用している。
以上
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