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会計アドバイザリー

No.
39

PPA では、有形資産はどのように評価されるのか?

I. PPAにおける有形資産評価の実態

平成18年4月1日以後から適用された「企業結合に係る会計基準」(平成20年改正により企業会計基準21号「企業結合に関する会計基準」(以下、「企業結合会計基準」という))で「取得原価の配分」が規定されたが、これが一般にPPAと称されている。
PPAにおける無形資産評価については、平成22年4月1日以後実施される企業結合から強制適用となり、これに対応する実務は慎重になされてきたものと思われる。また、不動産については、不動産鑑定士による鑑定評価やその他指標を入手し、合理的に算定された価格を時価とすることができる。一方で、機械設備等の動産の評価については、同様の機能をもつ資産の再調達価額の情報を取得することが第一に考えられるが、実際に受け入れる新品でない資産は、一定の陳腐化等のディスカウントをする必要があり、簡単には時価を取得することができない。そのため、実務上、機械設備等の動産については、上記の無形資産や不動産ほどには時価での評価がなされていないようである。

II. 有形資産評価の専門家の存在

我が国において機械設備等の動産に係る評価が積極的になされていない背景には、専門家の不足が挙げられよう。機械設備等の動産に係る評価については、不動産鑑定士や不動産鑑定評価基準のような国家資格や評価基準が存在しないため、その評価については、あまり馴染みがない領域となっている。そのため、我が国における機械設備評価の専門家は少数であり、今後の専門家育成が大きな課題となっている。この点については、RICS(Royal Institution of Chartered Surveyors:英国王立調査人協会)、ASA(American Society of Appraisers:米国鑑定人協会)といった、国際的にも通用する団体が付与している称号・資格を有する専門家を育成することが考えられる。特に米国では、械設備等に精通したエンジニアがASA等の資格を取得して評価業務に携わるのが一般的であることを鑑み、我が国でも、エンジニア的素養を持った専門家の育成が望まれる。

III. PPAにおける機械設備評価

評価の際に考慮される合理的な評価方法として、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、コスト・アプローチの3つのアプローチが一般的に認められている。ここで、機械設備等の動産に係る評価においては、インカム・アプローチは資産ごとの個別に紐づけされたキャッシュ・フローの把握が困難であるため、ほとんど用いられないのが一般的である。また、評価対象資産点数が多数にのぼる場合、中古市場が存在しその市場価格が入手可能な場合等の状況は限定的であるため、マーケット・アプローチの全面適用も難しい。したがって、機械設備等の動産に係る評価には、コスト・アプローチが主に適用されることになる。
コスト・アプローチによる評価プロセスは、「公正価値(時価)=新規再調達価額-物理的劣化-機能的後退-経済的・外部要因的後退」となる。ここで、新規再調達原価の推定には、同一メーカー・他メーカーの同種同能力設備に係る見積り取り付け金額等が用いられ、物理的劣化の推定には、「耐用年数-残存耐用年数=実年齢」の考え方のもと、耐用年数については設備の物理的寿命に則した耐用年数を適用し、残存耐用年数についてはオーバーホール履歴、計画、過去の稼働時間、設備管理担当者のヒアリング情報などをもとに推定される。また、機能的後退、経済的・外部要因的後退の推定には、実務上、機械設備のコストとキャパシティ(能力・容量)の関係を定式化したコストエンジニアリングの考え方を適用した「コストキャパシティ法」等の技法が用いられている。

 

以上

 

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