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No.
175

上場企業によるM&A投資基準策定の動き~コーポレートガバナンスコード改訂との関連~(2025年9月号)

はじめに

上場企業によるM&A投資資金枠にかかるIR開示事例が増加傾向にあります。当社グループの顧客企業からは、M&A強化の次の課題として、投資判断基準を定義したいとの声が多く聞かれるようになっています。

金融庁は本年6月に、コーポレートガバナンスコード(以下、CGC)の2026年改訂の方向性を示唆する「アクションプログラム」を公表しました。
とりわけ注目されたのは、「稼ぐ力の向上」と題した項目の中で、「投資等のための経営資源の配分に関し、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているか、例えば現預金を投資等に有効活用できているかの検証・説明責任の明確化を検討する」と記された点です。
上場企業の成長投資を促すために、現預金をため込みすぎていないか、という問いが投げかけられた格好です。

上場企業によるM&A投資基準策定の動き

資金用途と必要現預金の水準についてIR開示資料等で明示するフレームワークとしては、「キャピタルアロケーション」が代表的です。
キャピタルアロケーションの枠組みの中で資金計画を精査していくと、最終的に、キャッシュフローや余剰資金の用途として、成長投資/株主還元の配分問題に突き当たります。
この結果、上場企業が相応の金額の「M&A資金枠」を中期経営計画等に盛り込むケースが急増しているように思います。

M&A資金枠を設定し終えた企業の多くが直面する次の課題は、M&Aや設備投資の可否を判断する投資判断基準を明確に定めていない、という問題です。
米国では、M&Aを行った際の企業価値バリュエーションの正当性を巡り、株主が企業(取締役)を訴えるクラスアクション(代表訴訟)も増えています。
M&Aや設備投資の判断基準に、自社の資本コストや買収対象の資本コストを考慮することは、「資本コスト経営」の一丁目一番地です。

ただし、自社の資本コストをハードルレート(最低限クリアすべき収益率)に一律設定すればよいものではなく、投資規模、投資対象の業種や成長ステージ、出資比率等に応じて、戦略的に設計する必要があります。

おわりに

当社グループでは、企業価値算定機関としての資本コスト推計のナレッジを活用して、適正な投資基準/ガイドラインの策定に関するアドバイザリー業務に関するご相談を承っています。

お気軽にご相談ください。

 

執筆者紹介

山手 剛人 < プロフィンクス株式会社 代表取締役副社長 >
1999年にウォーバーグ・ディロン・リード証券(現UBS証券)に入社後、2003年に最年少(当時)でシニアアナリストに就任し、上場小売業の株式格付け業務に従事。日経アナリストランキングで継続的に上位評価を獲得(最高順位は2010年に総合小売セクターで2位)。
2010年にクレディ・スイス証券に移籍し、株式調査部共同副部長、日本の小売セクター担当、グローバル消費調査チームヘッドを兼任。
2017年にフロンティア・マネジメント株式会社に入社し、マネージング・ディレクターとして戦略コンサルティングとM&Aのプロジェクトに多数関与し、2021年にはエクイティーアドバイザリーに特化した企業価値戦略部長に就任。
2025年より現職。
著書(共著)に「宅配がなくなる日~同時性解消の社会論(2017年、日本経済新聞出版)」と「ESG格差~沈む日本とグローバル荘園の繁栄(2024年、日本経済新聞出版)」。日本証券アナリスト協会ディスクロージャー研究会小売専門部会委員(2010~2015年)。経済メディアNewsPicksプロピッカー(2017年~現任)。
東京大学経済学部卒。


株式会社プルータス・コンサルティング 広報担当

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