経営再建中であった旧カネボウ株式会社が、クラシエホールディングス株式会社に対して主要事業を営業譲渡により移転するに際し、反対株主からの株式買取価格が裁判にて争われた事例において、東京地方裁判所の委嘱を受け、鑑定補助人として旧カネボウ株式会社の株式価値の鑑定を実施しました。
本事案では、営業譲渡の実施時点において既に上場廃止となっていた旧カネボウの株式価値の評価手法が論点の一つとなり、弊社はDCF法を単独で採用し1株当たり価値を360円と算定しました。当該鑑定結果に基づき、東京地裁は買取価格を1株360円に決定し、平成22年10月に最高裁にて確定しております。
本事案は、評価手法の選定、会社側が行った事業計画の修正の妥当性、割引率の算定方法など、インカム・アプローチによる株式価値算定の合理性が主たる争点となった裁判例として、実務におけるベンチマークとなっており、日本公認会計士協会の研究報告「事例に見る企業価値評価上の論点」においても、本事案がインカム・アプローチを巡る代表的な紛争事例として紹介されています。株式会社USENが、連結子会社であった株式会社インテリジェンスを株式交換により完全子会社とするに際し、反対株主からの株式買取価格が裁判にて争われた事例において、株式会社インテリジェンスからの依頼を受け、株式交換比率の前提となる株式価値の算定を実施しました。
本株式交換に際しては、第三者算定機関が提出した算定書を参考として株式交換比率が決定されました。しかし、その後反対株主からの株式買取価格が東京地裁で争われるに際して、当該算定書の証拠資料としての提出が、守秘義務等の理由により拒絶されました。そこで、東京高裁での抗告審においては、当該算定書において用いられたのと同様の資料に基づき、弊社が株式交換比率を算定することにより、既に決定された株式交換比率の公正性を明らかにするという手法がとられました。
算定書の提出を受けた東京高裁は、「同算定書の算定結果が信頼できないものであるということはできない」として、算定された株式交換比率の客観性・合理性を認め、株式会社インテリジェンスの主張を一部認容する決定を下しています。
トランス・コスモス株式会社が、連結子会社であったダブルクリック株式会社を株式交換により完全子会社化した上で吸収合併する一連の取引に際して、ダブルクリック株式会社の委嘱を受け、第三者算定機関として株式交換比率を算定するとともに、当該算定結果が財務的見地から公正である旨の意見書(フェアネス・オピニオン)を提出しました。
本件取引においては、トランス・コスモス株式会社がダブルクリック株式会社の発行済株式の60.7%を有しており、外形上利益相反の生じる余地がありました。そこで、公正性を担保する観点から、株式交換比率の算定とともにフェアネス・オピニオンの提出が要請されたものです。
その後、ダブルクリック株式会社を吸収合併したトランス・コスモス株式会社と、旧ダブルクリックの反対株主との間で争われた株式買取価格決定申立事件では、東京地裁はフェアネス・オピニオンの取得を含む一連の利益相反回避措置が実施されたことを理由に、「透明性の高い手続によって行われた」と認定し、会社側の主張を認める決定を下しています。
現行の実務において、フェアネス・オピニオンが取得される例は多くありませんが、少数株主保護の見地から、親子会社間の組織再編など利益相反関係が存在する取引では、第三者により財務的見地から公正性を検証された価格で取引を実行する実務の定着が望まれるところであり、本件取引はその先駆けになるものとして専門誌でも注目されました。
株式会社MMホールディングスによるカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の普通株式及び新株予約権に対する公開買付けに際して、対象者により選任された独立委員会からの委嘱を受け、対象者普通株式の価値算定を実施しました。
本公開買付けはMBO(経営者による企業買収)の一環として実施されたもので、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の創業者である増田宗昭氏が、対象者の発行済株式の41%と公開買付者の全株式を保有し、なおかつ双方の代表取締役を兼ねるなど、強い利益相反の構造が存在していました。
このことから、本公開買付けの実施に際しては、取引の透明性及び客観性を確保するための特段の措置が講じられました。具体的には、外部有識者からなる独立委員会が組成され、対象者による意見表明に先立ち取締役会へ答申を行うだけでなく、本公開買付けに係る条件等についての交渉を行うものとされました。このような背景から、本公開買付けにおいては独立委員会が独自にフィナンシャル・アドバイザーを選任することとなり、弊社が委嘱を受けるにいたったものです。
MBOを始め、二段階買収によるスクイーズアウトを伴う組織再編が活発化する中で、少数株主保護の観点から、手続の公平性、透明性を確保する要請は年々高まっています。本公開買付けは、第三者からなる独立委員会に条件交渉を含む広汎な権限が委嘱された事例であり、今後の実務におけるスタンダードになりうるものとして注目されています。



